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彼の親友

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「失礼します、中佐。こちらの書類ですが・・・」
 ファイルと資料を抱えて執務室に入ってきたリザは、そこに先客がいることに気がついて言葉を切った。
「それでよ、風呂に入れるのは俺の役目なんだけどさ、もう手も足もお腹も背中もすんげー柔らかいのよ。もうさ、こんなにかわいい生き物が存在することに感動すら覚えるよな。・・・おい、ロイ!聞いてるか!お前さ、愛ってどんな形してるか知ってる?愛の形ってさ、天使なのよ!でもって、子どもは天使だ!子どもは愛そのものだったんだ!」
「黙れ、ヒューズ!俺は仕事中だ!貴様の親ばかに付き合ってる暇はない!」
「俺も仕事中だよー。でもグラマン中将が逃亡中なんだもん。捕まるまで待っててくれ、って補佐官に頼まれてよ。しょうがねーじゃん。」
「だったら応接室で待てばいいだろうが!なんでここに来るんだ!」
「だからお前に俺の天使を見せてやろうと思って。」
「黙れ!子どもが生まれてから毎日のように電話してきやがって!エリシアの写真だって山ほど見ただろうが!」
「あ、こないだ百日祝いでよ、家族写真撮ったんだ。見る?」
「うるさい!もう写真は飽き飽きだ!どっか行け!」
 口角から泡を飛ばしながら叫んだロイを、ヒューズはヘラヘラ笑いながら受け流した。

「ご無沙汰してます、ヒューズ中佐。」
 リザがヒューズに敬礼すると、ヒューズは目を細めた。
「お、リザちゃん久しぶり。相変わらずかわいいね。うちの嫁ほどじゃないけどさ。あ、写真見る?」
「ヒューズ!少尉に触るな!近づくな!口説くな!少尉、離れろ!変態がうつるぞ!」
「おまえじゃあるまいし、俺が嫁以外の女を口説くわけねーだろ。」
「そうですよ、中佐。ヒューズ中佐に失礼です。世の中の男性全部があなたと同じと思わないでください。」
 呆れたように口を揃えて非難され、ロイは自分のデスクに突っ伏して落ち込んだ。
「中佐、これ追加の書類です。遊んでないで仕事してください。」
「遊んでないぞ、少尉。こいつが邪魔をするんだ。」
 ロイはヒューズを指差して抗議したが、リザはそれを無視した。
「ヒューズ中佐、今コーヒーお持ちしますね。」
「あ、リザちゃん!コーヒーの前にさ、俺、ラブレター預かってきたんだけど。」
「ラブレター?」
 リザは目を瞠って、鞄をゴソゴソと漁りだしたヒューズを見つめた。
「リザちゃん、こないだ中央に出張してきたろ?俺の後輩がそん時に一目惚れしたらしくてさ。紹介してくれ、って頼まれたんだよね。若いけど顔も性格も悪くねーし、将来性はあるやつよ。・・・あ、これだ。」
 ヒューズはロイをチラリと見てニヤリと笑うと、鞄から封筒を取り出しリザに渡そうとした。
「あの・・・ヒューズ中佐。お気持ちはありがたいですけど私・・・」
 リザが困ったようにそう言いかけた時、ヒューズの持っていた封筒が燃え上がって一瞬で灰になった。

・・・・・・

「おい、ロイ・・・」
 ヒューズの声に、リザは我に返った。
 慌ててロイを見ると、発火布をはめて真っ赤な顔でヒューズを睨んでいる。
 リザが文句を言おうと口を開くより早く、ロイはヒューズに指を突きつけた。
「どこのどいつか知らんが、少尉を口説くなんて絶対許さん!」
「・・・おい、ロイ。おまえ、バカか。なんでリザちゃん口説くのにおまえの許可がいるんだ?」
 ヒューズのからかうような口ぶりに、ロイはさらに激昂した。
「うるさい!少尉は俺の部下だ!副官だ!大事な女だ!手を出すやつは燃やす!灰にする!何人たりとも指一本触れることも許さん!」
「・・・めんどくせー男だな。リザちゃん、あっち行こうぜ。応接室でゆっくり話そうか。」
「待て、ヒューズ!」
「おまえは仕事中だろ?サボってると嫌われるぜ。ま、せいぜい頑張れ。」
 わざと親しげにリザの肩を抱き、怒りのあまり今度は蒼白になっているロイに笑いをかみ殺しながら、ヒューズは戸惑うリザを促して執務室を後にした。





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