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「Et cetera」
-父親の背中

父親の背中|3

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「あれ、鋼君ちの嫁ちゃんじゃない?」
 レベッカの指さした方を見ると、確かに公園のベンチにウィンリィが座っている。
「あ、本当。」
 リザは頷いた。
「何ちゃんだっけ?」
「ウィンリィちゃんよ。」
「なんか元気ないんじゃない?声かけたら?」
 大人2人でぼそぼそ話してる間に、ウィンリィを見つけた双子は目をきらきらさせて走って行ってしまった。
「ウィンリィちゃーん!」
「あれ?」
 双子の突進に顔をあげたウィンリィは、一緒にリザとレベッカがいることに気づいた。
「あ、リザさん。と、えっと・・・」
「レベッカよ。」
 レベッカは抱っこしていた息子をよいしょ、っと抱え直すと、しゃがんでウィンリィと目を合わせた。
「ウィンリィちゃん、鋼君とケンカでもした?」
 レベッカの問いにウィンリィは目を見開いた。
 その大きな瞳から大粒の涙があふれ出し、2人の大人は慌てた。
「ちょ、ちょっと。どうしたの?」
「け、ケンカっていうか・・・」
 そこから言葉にならず泣き出してしまったウィンリィの背中をあやすように叩きながら、リザとレベッカは顔を見合わせた。

「あー、それは鋼君が悪いわ。」
 レベッカは顔をしかめて、テーブルのティポットを手にとった。
「ま、もう一杯飲みなさい。」
「ありがとうございます。」
「あの子も落ち着いたと思ったけどね。」
 リザも紅茶を飲みながら、肩をすくめ、リビングで探検ごっこに興じている双子をチラリと見た。
「ルミ!ルナ!ちっちゃい子が危なくないように気をつけてね。」
「はーい!」
 双子はヴァンを従え、まだ足下の覚束ないヴァンの弟をあやしながら、楽しそうに遊んでいた。
「あんたんとこの双子、ほんっと面倒見いいわよね。」
 レベッカが感心したように言うと、リザは苦笑した。
「ほんとよね。なんでかしら。」
「あんたに似てんでしょ。」
 レベッカはからかうようにそう言い、ウィンリィに向き直った。
「ほら。遠慮しないでおやつ食べなさい。これ、リザが作ったやつだからおいしいわよ。」
「晩ご飯も食べていけばいいじゃない。ウィンリィちゃん、何食べたい?」
「もう泊まってけばいいじゃん。リザも双子も泊まってくんだしさ。」
「そうよ。夜更かししてエドワード君の悪口、全部吐き出しちゃいなさい。」
 リザとレベッカに交互に優しくされ、ウィンリィの目にまた涙がたまった。
「でもレベッカさん、ご主人帰ってくるんじゃ・・・?」
「ああ。今うちのセントラルに出張中。帰ってくるの来週だから気兼ねしなくていいの。」
「赤ちゃん生まれたばっかりで、ご主人いなくて不安じゃないですか?」
「そういう仕事だってのは私もよく知ってるしね。最初から期待しちゃいないわよ。いなきゃいないで、私がやりゃいいんだから。」
「期待はしちゃだめよね。でも任せてやらせとかないとできるようにはならないし。」
「完璧も求めちゃだめね。やるだけマシか、って思わないと。」
「レベッカひどい。」
「あんただって同じこと言ってるでしょ。」
「私はいつだって夫に感謝してます。」
「誰が感謝してない、つったのよ。私だってしてます。」
 2人のやり取りを見ていたウィンリィは、ようやく少し笑った。
「いいな、お2人とも仲良くて。」
「普通よ。」
 レベッカは即座にそう言った。
「普通ね。」
 リザも頷いた。
「私、田舎の学校だったし、あまり同年代の友だちとかいなくて。」
 そう言ってウィンリィはため息をついた。
「リゼンブールに帰れば少しはいるけど。なんか疎遠になっちゃった。」
「子どもの時の友だちなんてそんなもんじゃない?」
 そう言ってレベッカはテーブルのクッキーをつまんだ。
「私だって実家の友だちなんかすっかり疎遠よ。」
「私も疎遠だったわ。最近復活したけど。」
 リザもそう言ってクッキーをかじった。
「でもそれって、今また実家に住んでるからで、そうじゃなかったら疎遠のままだったわ。」
「友情なんて薄情なもんよね。」
 うんうん、と頷き合っているリザとレベッカを見て、ウィンリィは首を傾げた。
「でもお2人はずっと連絡取ってるんでしょ?」
「大人の友情はまた別なのよ。」
 訳知り顔で、レベッカはそう言った。
「ていうか、少々離れても平気なの。」
 リザはそうつけたした。
「半年とか1年とか平気で連絡しないわよね。」
「そんな離れてる気、しないのよね。」
「最近、遊んでないかな、と思ったら2年くらい経ってたりとか。」
「あるある。え?そんなに会ってなかったっけ?みたいな。」
「お互い仕事忙しかったしね。」
「家庭もあるしね。」
「まあでも息抜きとか逃げ場はいるわよ。」
「そうよね。1人でやってると煮詰まっちゃうし。」
「旦那もね。わかってるようで的外れなとこあるし。」
「あるわ。なんていうの?嬉しいんだけど、ちょっと違う!っていうか。」
「そうそう。その場はとりあえずお礼言っとくけど、ああ!もう!っていうか。」
「よそで笑い話に昇華させないとね。本人に言うと落ち込んじゃうから。」
「わかるわ。意外にメンタル弱かったりするのよね。」
 互いの連れ合いが聞いたら落ち込みそうなことを言い合いながら、リザとレベッカは笑った。
「なんか・・・リザさんもレベッカさんもすごい。」
 そう言ってウィンリィはテーブルに突っ伏してしまった。
「私・・・エドに頼りすぎなのかも。」
 そう言ってしゃべらなくなってしまった若い友人に、2人は黙って顔を見合わせた。





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