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「Et cetera」
-エスコート

エスコート|4

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 俺もやればできる男だってことを見せてやろうじゃないか。
 ハボックは気合いを入れて、デートプランを練った。

ハボックの場合

「ここ?」
 駅前でレンタカーを借りて走ること20分。
 山と畑しかないこの場所にはいささか不釣り合いなほど派手な建物の前で、中尉は戸惑っていた。
「ここ、何?」
「ゲーセンっすよ。来たことないですか?」
「ゲームセンターなら学生時代にレベッカと何回か遊んだけど、こんな大きなとこは初めて。」
「ここいいっすよ。定額フリータイムでずっと遊べるし。ゲームだけじゃなくてスポーツとかもできますよ。」
 受付をすませて中に入ると、平日昼間であることも幸いして、暇そうな学生連中が数人いる程度だった。
「ゲームしませんか?」
 ゲームコーナーをぐるりと見回し、ハボックは大きな和太鼓が鎮座したゲーム機の前に中尉を誘った。
「俺、これ得意なんっすよ。」
「これ何?太鼓?どうやるの?」
 中尉は和太鼓の真ん中を手でべしべし叩きながら、ハボックを見た。
「簡単ですよ。まず、両手にバチを持って・・・」
「これ、お金は?」
「ここのは遊び放題です。で、真ん中叩いて・・・」
 ハボックはカンカン太鼓の縁を叩いたり、真ん中を叩いたりして曲とレベルを選んだ。
「じゃ、まずは俺がやりますね。」
「どうすればいいの?」
「赤丸が来たら真ん中叩いて、青丸のときは太鼓の縁を叩いて、あとは画面の指示通りにやればOKです。」
 ハボックは息をつめて、画面に集中した。
 自慢じゃないが、この手の音ゲーは学生時代からかなりやりこんでいる。
 ハボックは何度かタイミングをずらしながらも叩き損じることはなく、1曲フルコンボした。
「ま、こんな感じです。」
 振り返ると、興味津々、といった顔で見ていた中尉が手元を覗き込んでいた。
「ね、私にもやらせて。」
「いいっすよ。じゃあまず知ってる曲選んで・・・」
「これにするわ。」
「・・・それっすか。結構速いですよ。まあでも難易度『かんたん』からくらいなら・・・」
「とりあえず『ふつう』からやってみるわ。」
「え?」
「無理そうならレベル下げてみる。」
 中尉が選んだのは『レジェンド』とまで言われる人気バンドの代表曲だった。
 このゲームでは定番の人気曲ではある。
 ・・・かなりやりこんでいるゲーマーの間でも。
 中尉はすっと息を詰めて、画面を見つめた。
 ・・・おいおい、鷹の目になってるよ。
 けれども初めてのプレイだというのは本当だったようで、中尉は何度か叩き損じも出し、連打などで時々戸惑いながら、かろうじてゲームクリアに手が届くレベルだった。
「ま、最初はそんなもんでしょうね。」
 ハボックは苦笑した。
「でもコツつかんできたわ。」
 そう言って中尉はにっこり笑った。
「ね、少尉。勝負しましょう。」
「初心者に負けるほど油断はしませんよ、俺。」
「ちょっと練習したらいい線いける気がするんだけど。」
「ちょっと、って?」
「15分くらい?」
 いやいや、いくらなんでも。
「じゃあ俺、30分くらい他のゲームとかで時間つぶしてくるんで、中尉練習してくださいよ。」
「30分も?」
「で、30分後に勝負しましょう。ジュース賭けて。」
 まあ、ジュース1杯おごってもらうくらいは許容範囲だろう。
「ふーん。私に時間を与えたこと、後悔しても知らないわよ。」
 中尉はニヤリと不敵な笑みを唇の端に浮かべた。

 30分ほどシューティングゲームやカートレースなどで時間をつぶし、ハボックは中尉の元へと足を向けた。
 なんだか和太鼓のあたりがざわついている。
 怪訝に思って人だかりの後ろから覗いてみると、学生らしい背の高い男と中尉が太鼓を叩いていた。
 曲はさっき中尉が叩いていたレジェンドバンドの定番曲だ。
 だがスピードが違う。音符の数も違う。
 男の方も必死で連続「良」を叩き出しているが、中尉の方が腕の動きも軽やかで余裕がある。
 1曲終わり、採点に入った。
 途端に「おー!」と歓声があがる。
 中尉は全音符「良」のフルコンボだった。
「すげー!またねーちゃんフルコンボじゃん!」
「ほんとに初めて?マジで?」
「今度俺と勝負してよ!」
「いいけど私、これしかできないの。またこの曲でもいい?」
「中尉!」
 人をかきわけてハボックが声をかけると、中尉は手を振った。
「あら、少尉。もう30分?」
「あら少尉、じゃないっすよ。なんですか、このお祭り騒ぎは。」
「最初は1人で練習してたんだけど、誰かと対戦した方が上達するんじゃないかと思ってつきあってもらってたの。」
「だからって・・・」
 その時、ハボックは首の後ろにチリッとした殺気を感じた。
 反射的に振り向いて後ろを見回すと、やけに見慣れた黒髪の男が殺気を隠そうともせず和太鼓周辺の男たちをにらんでいる。
 ・・・何やってんだ、あの人。
「とにかく少尉、勝負しましょ。負けたらジュースよ。」
 中尉は俄然やる気だ。一方ハボックは不吉な予感しかしない。
「えーと、曲はこれでいいっすか?レベルは?」
「『おに』いってみる?」
「いや!『むずかしい』で!ていうか、『おに』、できるんっすか?」
「さっきちょっとやってみたけど、全然歯が立たなかったわ。」

 ハボックも健闘したが、さすがに「良」フルコンボの中尉には敵わなかった。

「さすがにちょっと腕が痛いですね。筋肉痛かも。」
「そりゃ30分以上も太鼓叩けばな。」
「なんで太鼓叩いてたことを大佐が知ってるんですか?」





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