「Et cetera」
-2017年6月~9月
寝ぼけると
目が覚めると、腕の中に見慣れた副官がいて一瞬動揺した。
しかしすぐに「そういえば昨日泊まったんだったな」と、思い出した。
本当は2人の非番が揃うまでそういうことはいろいろ我慢しようと思っていたのだが、昨日結局我慢できなくなってしまった。
おかげで今日は非番ではない。
私も彼女も通常通りお仕事である。
しかももともとそういう予定にしていなかったため、この家には彼女の生活用品が何もない。
一旦帰る、と言っていたし、それなら出勤時間を考慮して早めに起きなければならない。
そう思って彼女の顔を覗き込むと、過去に覚えのないほど安らかな顔をしていて、電気が走るような衝撃を覚えた。
・・・やばい、かわいい。
長いまつげにふちどられたまぶたも、すべすべの頬も、少し開いた唇も、そのすべてに触れたい欲が抑えきれない。
しかも自分が抱きしめている彼女が、何も纏っていないことに今さら気がついて目眩がした。
困った。このしっとりと吸い付くように滑らかな肌を手放すことはとてもできそうにない。
とはいえ、朝から(しかも出勤前に)そういうことを始めるわけにもいかないので、私は大きく息を吐いてぎゅっと彼女を抱きしめた。
まずは落ち着こう。
私は自分にそう言い聞かせた。
朝であることも手伝って、しかも裸のリザを抱きしめてしまったせいか自分の一部は完全に戦闘態勢だが、そこは大人として抑えなければなるまい。
とにかく彼女を起こそう。
そう思って肩を叩こうとすると、彼女の目がうっすら開いた。
「あ、リザ。起きたのか。おはよう。」
彼女は焦点の定まらない目でぼんやり私を見ていたが、再び目をつぶると猫のようにスリッと身を寄せてきた。
「嫌です。」
「・・・は?」
もごもごと彼女の口から発せられた言葉に、私は耳を疑った。
「起きてません。」
彼女はそう言って私の背中に手を回した。
「もうちょっと。」
・・・いつもの中尉じゃない。
そんな声でそんなこと言われたら、理性が崩壊しかねない。
しかも彼女が腕を回してきたせいでさらにお互いの体が密着して、はっきり言うと彼女の柔らかい胸がギュウと当たって押しつぶされてそれがとてつもなく気持ちいい。
そんなふうにされてしまうと、私の体は本能に忠実だった。
吸い寄せられるように、目の前にあった彼女の唇に触れた。
それは本当に、当たるか当たらないかというくらいのかすかな触れ方だったのだが、彼女の方がそのまま唇を強く押し返してきた。
思わずチロリと彼女の唇をなめると、寝ぼけているらしい彼女が緩く唇を開いてそれを受け入れて、さらにちろちろと舌先でつついてくるものだから、そうなると理性は意識の遙か彼方まで飛んでいってしまった。
「リザ。」
彼女の肩を抑えてのしかかりさらに深く唇を重ねようとすると、今度は彼女の手で阻まれた。
・・・ ・・・
「何をする。」
「それはこちらのセリフです。何をなさってるんですか、大佐。」
どうやら押し倒した拍子に、完全に目を覚ましてしまったらしい。
いつもの毅然とした鳶色の瞳を向けられて、ほんの少しがっかりした。
「起きたくない、もうちょっと、って言ったのは君じゃないか?」
拗ねたようにそう言うと、本人は自覚がなかったらしく目を瞠り、顔を赤らめた。
「そんなこと言ってません。」
「言ったんだ。君の方から抱きしめてきて、キスしてくれて、すごくかわいかった。」
事実ではあるがちょっと脚色して話すと、彼女は真っ赤になった。
「もうバカなことばっかり。今、何時ですか?起きなきゃ。」
そう言って身を起こしかけた彼女は、そこで初めて自分と私の状態に気づいたのか、また頭まで布団をかぶってしまった。
「リザ?何してるんだ?」
「なんで・・・」
彼女の声がくぐもって聞こえる。
「なんで裸?」
「いや、なんでって。だって昨日・・・」
「知ってます!覚えてます!忘れてただけです!どうしよう!出れない!」
「なんで今さら。昨日散々見たし触ったし、大体さっきまで・・・」
「言わないで下さい!いいから私の服とって!」
「・・・下着も?」
「触らないで!」
「どうすればいいんだ。」
私は苦笑して、布団の上から彼女の頭をなでた。
「しょうがないな。私はシャワーを浴びてくるからその間に服着なさい。」
「・・・はい。あの、大佐。」
彼女は布団から目だけ出すと、じっと私を見た。
「ん?なんだ?」
「あなたもパンツくらい履いてください。」
「・・・わかった。私がパンツはくとこ、見たい?」
「見ません!」
しかしすぐに「そういえば昨日泊まったんだったな」と、思い出した。
本当は2人の非番が揃うまでそういうことはいろいろ我慢しようと思っていたのだが、昨日結局我慢できなくなってしまった。
おかげで今日は非番ではない。
私も彼女も通常通りお仕事である。
しかももともとそういう予定にしていなかったため、この家には彼女の生活用品が何もない。
一旦帰る、と言っていたし、それなら出勤時間を考慮して早めに起きなければならない。
そう思って彼女の顔を覗き込むと、過去に覚えのないほど安らかな顔をしていて、電気が走るような衝撃を覚えた。
・・・やばい、かわいい。
長いまつげにふちどられたまぶたも、すべすべの頬も、少し開いた唇も、そのすべてに触れたい欲が抑えきれない。
しかも自分が抱きしめている彼女が、何も纏っていないことに今さら気がついて目眩がした。
困った。このしっとりと吸い付くように滑らかな肌を手放すことはとてもできそうにない。
とはいえ、朝から(しかも出勤前に)そういうことを始めるわけにもいかないので、私は大きく息を吐いてぎゅっと彼女を抱きしめた。
まずは落ち着こう。
私は自分にそう言い聞かせた。
朝であることも手伝って、しかも裸のリザを抱きしめてしまったせいか自分の一部は完全に戦闘態勢だが、そこは大人として抑えなければなるまい。
とにかく彼女を起こそう。
そう思って肩を叩こうとすると、彼女の目がうっすら開いた。
「あ、リザ。起きたのか。おはよう。」
彼女は焦点の定まらない目でぼんやり私を見ていたが、再び目をつぶると猫のようにスリッと身を寄せてきた。
「嫌です。」
「・・・は?」
もごもごと彼女の口から発せられた言葉に、私は耳を疑った。
「起きてません。」
彼女はそう言って私の背中に手を回した。
「もうちょっと。」
・・・いつもの中尉じゃない。
そんな声でそんなこと言われたら、理性が崩壊しかねない。
しかも彼女が腕を回してきたせいでさらにお互いの体が密着して、はっきり言うと彼女の柔らかい胸がギュウと当たって押しつぶされてそれがとてつもなく気持ちいい。
そんなふうにされてしまうと、私の体は本能に忠実だった。
吸い寄せられるように、目の前にあった彼女の唇に触れた。
それは本当に、当たるか当たらないかというくらいのかすかな触れ方だったのだが、彼女の方がそのまま唇を強く押し返してきた。
思わずチロリと彼女の唇をなめると、寝ぼけているらしい彼女が緩く唇を開いてそれを受け入れて、さらにちろちろと舌先でつついてくるものだから、そうなると理性は意識の遙か彼方まで飛んでいってしまった。
「リザ。」
彼女の肩を抑えてのしかかりさらに深く唇を重ねようとすると、今度は彼女の手で阻まれた。
・・・ ・・・
「何をする。」
「それはこちらのセリフです。何をなさってるんですか、大佐。」
どうやら押し倒した拍子に、完全に目を覚ましてしまったらしい。
いつもの毅然とした鳶色の瞳を向けられて、ほんの少しがっかりした。
「起きたくない、もうちょっと、って言ったのは君じゃないか?」
拗ねたようにそう言うと、本人は自覚がなかったらしく目を瞠り、顔を赤らめた。
「そんなこと言ってません。」
「言ったんだ。君の方から抱きしめてきて、キスしてくれて、すごくかわいかった。」
事実ではあるがちょっと脚色して話すと、彼女は真っ赤になった。
「もうバカなことばっかり。今、何時ですか?起きなきゃ。」
そう言って身を起こしかけた彼女は、そこで初めて自分と私の状態に気づいたのか、また頭まで布団をかぶってしまった。
「リザ?何してるんだ?」
「なんで・・・」
彼女の声がくぐもって聞こえる。
「なんで裸?」
「いや、なんでって。だって昨日・・・」
「知ってます!覚えてます!忘れてただけです!どうしよう!出れない!」
「なんで今さら。昨日散々見たし触ったし、大体さっきまで・・・」
「言わないで下さい!いいから私の服とって!」
「・・・下着も?」
「触らないで!」
「どうすればいいんだ。」
私は苦笑して、布団の上から彼女の頭をなでた。
「しょうがないな。私はシャワーを浴びてくるからその間に服着なさい。」
「・・・はい。あの、大佐。」
彼女は布団から目だけ出すと、じっと私を見た。
「ん?なんだ?」
「あなたもパンツくらい履いてください。」
「・・・わかった。私がパンツはくとこ、見たい?」
「見ません!」
総もくじ 少尉と中佐
- ┣ - 少尉と中佐
- ┣ - Distance
- ┗ - 2人の夜
総もくじ 中尉と大佐
- ┣ - 中尉と大佐 (1)
- ┣ - 中尉の背中
- ┣ - 中尉と大佐 (2)
- ┗ - 約束の日のあと
総もくじ マスタングさんち
- ┣ -准将と大尉
- ┣ -thread
- ┣ -中央司令部 (1)
- ┣ -Remember
- ┣ -マスタングさんち
- ┣ - 今昔物語
- ┗ - 中央司令部 (2)
総もくじ 彼と彼女の
総もくじ Et cetera
- ┣ -2016年6月~8月
- ┣ - うちのお父さん
- ┣ - 彼女の親友
- ┣ -2016年9月~12月
- ┣ -2017年1月~5月
- ┣ -父親の背中
- ┣ -うちの副官
- ┣ -恋人指南
- ┣ -エスコート
- ┣ -2017年6月~9月
- ┣ 師弟と親子
- ┣ -2017年11月~12月
- ┣ -2018年1月~6月
- ┣ -2018年6月~12月
- ┣ -2019年1月~6月
- ┣ -2019年7月~12月
- ┣ 風の歌
- ┗ -2020~2022
総もくじ 22箇所にキスする2人
- ┣ -リザとロイ~少尉と中佐
- ┣ -中尉と大佐~約束の日
- ┗ -未来
もくじ 未分類
もくじ プロローグ
総もくじ 少尉と中佐
- ┣ - 少尉と中佐
- ┣ - Distance
- ┗ - 2人の夜
もくじ ロイとリザ
総もくじ 中尉と大佐
- ┣ - 中尉と大佐 (1)
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- ┣ - 中尉と大佐 (2)
- ┗ - 約束の日のあと
総もくじ マスタングさんち
- ┣ -准将と大尉
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もくじ 彼の親友
総もくじ 彼と彼女の
総もくじ Et cetera
- ┣ -2016年6月~8月
- ┣ - うちのお父さん
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- ┣ 師弟と親子
- ┣ -2017年11月~12月
- ┣ -2018年1月~6月
- ┣ -2018年6月~12月
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- ┣ 風の歌
- ┗ -2020~2022
もくじ たとえば貴方のいない部屋で
もくじ 甘々ワードパレット
総もくじ 22箇所にキスする2人
- ┣ -リザとロイ~少尉と中佐
- ┣ -中尉と大佐~約束の日
- ┗ -未来
もくじ 新刊サンプル
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