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「Et cetera」
-2017年6月~9月

たまには

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 誠に遺憾であるが欲求不満のようである。

 タイミングがあわない時がある。
 1月前、郊外の軍事工場でぼや騒ぎがあり、事故と事件両方の疑い有りということで、司令部はしばらくかかりきりになっていた。
 結局は機材の老朽化に伴う事故と判明したのだが、今度はその間にたまった通常業務をこなすために残業が続いていた。
 ようやく休みがとれた時はリザの月の事情により、いちゃいちゃは延期になってしまった。
 その後、彼の夜勤やリザの出張などで互いの生活は微妙にすれ違い、そして今日に至る。
 明日、リザの予定は遅番だった。
 非番ではないのでいつもなら帰宅するのだが、リザの本能が「帰りたくない!」と駄々をこねる。
 いつものように食事の後片付けを終えたあと、本当に無意識に「お風呂頂きます」と告げてバスルームにきてしまった。
 彼の顔は確認しなかったが、きっと呆気にとられたに違いない。
 お湯をためたバスタブの中で、手足をのばす。
 とぷん、と頭まで潜って、ユアンユアンと鼓膜を揺らす水の音に耳をすます。
 息が苦しくなってザバリと顔をあげ、大きく息をついた。
 今度は鼻から下をお湯につけて、ぷくぷくと小さな泡が出るのをじっと見つめた。
 苦しくなったら呼吸をして、それを繰り返す。
 お湯はぬるめにしていたが、いい加減のぼせそうだ。
 もう何度目になるか、最後の生理から今日が何日目にあたるかを数えてまたため息をついた。
 今日はまずい。このまま帰った方がいい。
 体の状態を鑑みても、今日は彼に近づかない方が無難だ。
 やはり人も動物なんだなと、リザはくだらないことに感心した。
 けれども本能はやはり彼を欲して渇いている。
 帰る、と告げれば、「送る」と彼は言うだろう。
 今は下着でゴロゴロしている彼だが、リザを送るときは無精もせずきちんと服を着て、リザの手を取って、指を絡ませるようにぎゅっと握るのだ。
「おやすみ、中尉。」
 そう言って彼は軽くリザの唇に触れる。
 付き合うようになってから、彼は額ではなく唇にキスをするようになった。

 ・・・非常にまずい。
 今、この状態でそんなことをされたら、そのまま自分の部屋に引っ張り込んでしまいそうだ。

 覚悟を決めて、立ち上がった。
 彼は優しい。互いの事情もリザの気持ちもきちんと理解してくれている。
 彼が避妊を怠ったことは1度もない。
 不測の事態さえなければ(破れているとか)、問題はないはずだ。
 パジャマを着て、髪も乾かして、リビングに戻った。
 彼はリビングのテーブルに、大量の本と、大量のメモ用紙と,大量の文房具を盛大に広げて、一心不乱に錬金術の世界に没頭しているようだった。

 ・・・ ・・・

 どうしよう。
 とりあえずソファには座らず、ダイニングの椅子に座って麦茶を飲みながら、リザはロイを眺めていた。
 彼の研究に口は出さない、を徹底するなら、このまま1人で寝室のベッドに潜り込み、彼が研究に飽きて戻ってくるのを待つしかない。
 けれども学者モードに入ってしまった彼は、時間という概念が抜け落ちてしまうので、このまま朝まで放置されることもあり得る。
 彼の部屋で彼のベッドに潜り彼の匂いに包まれたまま、独り寝で朝を迎えるのはいくらなんでも寂しすぎる。
 それを避けるにはとにもかくにも彼に声をかけて、こちらを向いてもらわなければ。

 ・・・なんと言って?

 ありきたりな言葉では届かない。
 遠回しな表現も。
 そもそも彼が集中している時、周囲の音はまったく耳に入っていない。
 それらを全部蹴破って、こちらを向いてもらおうと思ったら。
 率直に。はっきりと。

「抱いて下さい、とか?」

 思わず声になってしまった正直な気持ちは、それでも音にすればひどく小さなものだった。
 けれども彼の動きがぴたりと止まった。
 ギギギ、と音がしそうなぎこちない動きで首だけこちらを向く。
 その目が驚きで見開いている。
「今、何て言った?」
 まさか聞こえたとは思わず、リザはうろたえた。
「別に何も!」
「いや!言った!聞こえた!もう1回言って!」
「何をですか!」
「だからさっきの!ていうかパジャマだ!今日泊まってくれるのか?もちろんオッケーってことだよな!」
「だから何が!」
「今日はだめ、って言われると思った!私の計算だと危険日じゃないのか?何もせず隣で寝るだけ、なんて言うなよ!ていうかさっき、『抱いて』って言ったよな!」
「い、言ってないです!」
「大丈夫だ!私に任せろ!ちゃんとする!いつもしてるがちゃんと気をつける!」
「だから何を!」
「ここでする?ベッドがいい?」
「こ、ここは嫌です!」
 肩を抱かれてしまえばもはや抵抗することは敵わず。
 そもそも口では何と言っても、体の方は正直で。
 彼に促されるまま寝室に連れ込まれてしまえば、リザの方も心置きなく彼とのキスに没頭した。





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