FC2ブログ

「Et cetera」
-2017年6月~9月

慣れるまで

 ←恐竜/今昔 →悲しんでいるあなたを愛している
 キスをしようと彼女に顔を近づけると、彼女は一瞬身を固くした。
 それをじっと見ていると、なかなか触れられないことに焦れたのか、彼女は目を開けた。
 私は彼女の額にチュッとキスした。
 よくわからない、という顔で、彼女はキスされた額を指で押さえた。
「いつまでたっても慣れないんだな。」
 からかうようにそう言うと、彼女はきょとんとした。
「何がですか?」
「キス。いつも緊張してる。」
 自覚がなかったのか、彼女は目を瞠った。
「付き合ってずいぶんたつじゃないか。そろそろ慣れたまえよ。」
「別に緊張なんかしません。」
 ムキになって言い返してきた彼女の頬を両手で包むと、また彼女の体が強張った。
 鼻の付きそうな距離まで近づくと、彼女はコクリと喉を鳴らした。
 そのまま両手を滑らせて彼女の腕をつかんだ。
「ほら、緊張してる。」
 固くなった腕と肩をぐにぐにともみほぐすと、彼女にバシッと手を払われた。
「やめてください。」
「予測のつかない他人の動きに緊張する気持ちはわかるよ。」
 にやにやしながら理解のあるふりをすると、当然ながら見透かされたようだ。
 ふくれっ面で睨む彼女の頬を指の背でなでると、彼女はふいっと横を向いた。
「だから、少し練習しようじゃないか。」
「は?練習?」
 彼女は怪訝な顔でそう言った。

「じゃあまずは君からキスして。」
 彼女を引っ張り上げるようにして自分のひざをまたがせ、私はそう命令した。
「私からですか?どこに?どうやって?」
 私の指示に焦ったのか、彼女は実に間抜けな問いを返してきた。
「どうやってって。初めてじゃあるまいし。」
 くつくつと私が肩を震わせると、彼女は真っ赤になってばしばしと私の頭を叩いた。
「痛い痛い。ごめん、悪かった。だからほら。ここ。」
 彼女の手を取って私の唇に触れさせると、再び彼女は硬直した。
「自分で触って。」
 そう促すと観念したのか、彼女はゆっくり息を吐き、私の唇を指でなでた。
「キスは?」
 私が強請ると、彼女はぎこちなく唇を触れあわせてきた。
「いいね。もっとして。」
「もっと?」
 彼女は困惑したように眉を寄せた。
「うん。もっと触って、もっとキスして。君の好きなところに好きなようにしていいから。」
「好きなところ。どこでもいいですか?」
「どこでもいい。」
 どこでもいい、と確認したその時、彼女の目がきらりと光った気がした。
 さっきまでうぶで初々しかったはずの彼女は、途端に捕食者の目となり、じっとりとなめるように私を見た。
 マウントをとられた気分になった私は、引きつった笑みで少し尻を後ろにずらした。
 彼女は両手で私の髪をくしゃくしゃとなで、確かめるように頬に手を滑らせ、遊ぶように私の耳たぶを引っ張り、そのまま軽く甘噛みをして、ふっと息をふきかけた。
「ひょわ!」
 変な声をあげて耳を手で押さえると、彼女はおもしろそうにくすくす笑った。
「ちょっと楽しくなってきました。」
「そ、そうか。」
「私の好きにしていいんですよね?」
 今さらダメとも言えず、私は頷いた。
 彼女は両手で私の手を包むと、その甲に唇をつけた。
 そのまま今度は私の親指を口に含み、舌を這わせ、ときどき指先に口づけたり軽く甘噛みしたりし始めた。
「り、リザさん!」
 彼女の行為が違うモノを連想させ、私は焦って声をかけた。
 それを無視して、リザは親指から人差し指、そして中指へと愛撫を続けていく。
 小指までいってようやくこの甘い拷問から解放されるかと思いきや、リザはさっき散々嬲った薬指をまた口に含んだ。
「リザ!」
 そう呼ぶと、今度は彼女も目を上げた。
「なんですか?」
「な、なんでそこばっかり?」
「あなたの手が好きだからです。」
「・・・そうか。」
「何か問題が?」
「・・・いや。」
 彼女はご機嫌で指への愛撫を再開した。
 私はというと、自分の指を咥える彼女から目が離せず、時折くちゅくちゅと聞こえる淫らな音に耳を犯され、歯を立てられる痛みにすら反応してしまって、理性が爆発しそうだった。
 向かい合って抱き合うように座っているのだから、その固さに気づかぬはずはないのに、彼女はそっちには一向に触れてくれず、私の手ばかり弄っている。
 私から始めたはずの遊びなのに、いつのまにかすっかり彼女に遊ばれているようだ。
 まあいい。彼女が恋人同士の戯れに慣れるまで、私もとことんこの遊びにつきあおうじゃないか。





- - - - - - - - - -

拍手コメントお礼書いています。
該当記事をごらんください。

→ 恐竜/今昔

にほんブログ村 小説ブログへ 
ランキング参加しています。クリックいただけると励みになります。




Facebook始めました。更新情報をお知らせします。



関連記事
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png 少尉と中佐
総もくじ 3kaku_s_L.png 中尉と大佐
総もくじ 3kaku_s_L.png マスタングさんち
総もくじ 3kaku_s_L.png 彼と彼女の
総もくじ 3kaku_s_L.png Et cetera
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png プロローグ
総もくじ  3kaku_s_L.png 少尉と中佐
もくじ  3kaku_s_L.png ロイとリザ
総もくじ  3kaku_s_L.png 中尉と大佐
総もくじ  3kaku_s_L.png マスタングさんち
もくじ  3kaku_s_L.png 彼の親友
総もくじ  3kaku_s_L.png 彼と彼女の
総もくじ  3kaku_s_L.png Et cetera
  • 【恐竜/今昔】へ
  • 【悲しんでいるあなたを愛している】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。
  • 【恐竜/今昔】へ
  • 【悲しんでいるあなたを愛している】へ