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「Et cetera」
-2017年6月~9月

郷愁|Roy

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 ヒューズの結婚式は、穏やかな秋の日だった。

「いいお式でしたね。」
 いつもより着飾った副官は、汽車の中でそう言った。
「そうだな。」
 私は曖昧に頷いた。
「よかったのですか?二次会に残らなくて?」
「もっぱら惚気られるだけだ。くだらん。」
 私はネクタイを緩め、上着を座席に放り投げた。
「しわになりますよ。」
 副官が眉を寄せて、私の上着を丁寧にたたんだ。
「幸せそうだったな。」
 私が呟くと、彼女は微笑した。
「そうですね。」
「ずっと幸せだといいな。」
 今度は副官は何も言わなかった。
「君も」
 思わずそう続けてしまったのは、結婚式で飲んだワインのアルコール度数が意外に高かったせいだろうか。
「幸せでいてほしかった。」
「どういう意味ですか?」
 そう訊いた副官の声音は固かった。

 人は変わる。
 自分も。彼女も。
 戦場で彼女に再会するまで、そんな当たり前のことすら私はわかっていなかった。
 何も変わらないまま、ただ幸せでいて欲しいとそう思っていた。
 ヒューズの横で幸せそうにしていた、グレイシアのように。
 情けないことに、私は未だに立ち直っていないのかもしれない。
 変わってしまったと、戦場で思い知ったあの絶望感から。
 一方で、彼女の方はすっかり割り切ってしまったように見える。
 彼女にとって、私のことはもう過去になってしまったのかもしれない。

「私は変わったか?」
 そう訊くと、彼女は怪訝そうに私を見た。
「人は変わります。」
「君も変わったか?」
「私も人ですから。」
「変わらないと思っていた。」
「そんなわけないでしょう。」
「わかってる。少し感傷的になってるみたいだ。」
「そうですか。」
「ヒューズにあてられたかな。・・・幸せそうだったから。」
 そうではない、とわかっていた。
 眩しかったのはグレイシアの方だ。
 私はリザに、あんなふうに笑っていて欲しかったのだ。昔のままに。
「・・・人は変わりますよ。」
 リザは繰り返した。
「わかってるよ。」
 私はイライラとそう返事をした。
「前に進んでいる、ということです。」
 リザの言葉は、私の胸を衝いた。
「悪いことばかりじゃありません。人は成長して、変わっていくんですよ。」

「私は変わったか?」
「何を今さら。」
「それは好意的な意味にとらえても?」
「さっきの話、聞いてました?」
「じゃあ質問を変えよう。私は前に進んでいるだろうか?」
「亀の歩みですけどね。」
「君は?」
「何ですか?」
「前に進んでる?」
「一緒に歩く人が亀の歩みで苦労してます。」
「精進するよ。」





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