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「Et cetera」
-2017年11月~12月

酒を飲む|中尉と大佐

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「中尉、このあと飲み直さないか?」
 隣に座ってそう囁いてきた男を、私はちらりと横目で見た。
「仕事の飲み会後はまっすぐ帰れ、ってレベッカに言われてます。」
「そうか。じゃあ1度帰ってから私の家にくればいい。」
「嫌ですよ。」
「君の大好きなガディバのチョコがあるぞ。」
 ふっ、と息を吹きかけられて、私は肩をすくめた。
「そういうのセクハラですよ。」
「この前ヒューズにちょっと高めのサングリアをもらったんだ。」
「・・・赤ですか?白ですか?」
「両方ある。それと昨日マダムがピオーネとマスカットを送ってきてくれてね。1人では持てあましてしまうし、仕事にかまけてうっかり忘れてしまったらもったいないだろう。君が手伝ってくれれば、ぶどうも傷まないし私も助かるんだが。」

 なんて卑怯な男だろう。私がぶどうが大好物だと知った上でこんな言い方をするのだ。

「もちろんハヤテ号は連れてきてかまわないぞ。このまえ買ったジャーキーもまだ残っている。」
 私の様子からもう一押し、と睨んだのだろう。彼は着実に私のウィークポイントを狙って責めてくる。
「・・・もう時間も遅いじゃないですか。」
「君、明日休みだろう。」
 チェックメイト。
 しかし私が誘惑に負けて頷こうとしたその時、邪魔が入った。
「大佐ー!中尉にセクハラっすか?」
 顔を真っ赤にしたハボック少尉が、私と大佐の間に割り込んできた。
「中尉、大丈夫っすか?上司の横暴に耐えてません?」
「ハボック。私は部下の無神経に耐えれそうにないが?」
「見てくださいよ、中尉。ついに女の子の連絡先、ゲットです!」
「一緒に飲んでた黒い髪のイケメン紹介してください!とか言われるのがオチだぞ!」
「あれ?中尉、それジュースですか?お酒飲みましょうよ、お酒!すんませーん!オーダー頼みまーす!」
「ハボック!無理矢理アルコールを勧めるのはアルハラって言うんだぞ!おまえ、バカだから知らんだろうけどな!」

「・・・ん、ちょっと。大佐・・・」
 彼の胸に手を当てて押し戻そうとしたが、どれほど力をこめても彼は気にもとめなかった。
 口移しで皮付きのピオーネを押し込まれた。
 口の中にぶどうの甘味と香りが広がる。
 軽く噛んで皮を取ろうとしたのだが、大佐が舌を入れてきて邪魔をする。
 あめ玉のように、ぶどうが口の中を転がる。
 いい加減息が苦しくなってきたところで、口の中のぶどうを大佐にさらわれた。
「・・・あ。」
 彼はニヤリとしてもごもごと口を動かし、指で皮をつまんで出した。
 それから再び私に口づけて、ぶどうを押し込んだ。
「・・・おいしい?」
 今度はすぐに離れて、私の目を覗き込むようにしながらそう訊いてくる。
「バカですか。もう、普通に食べさせてください。」
「ああ、すまないな。君の口に入れてから皮を剥いてないことに気づいたんだ。」
「皮くらい自分で剥けます。そういう意味じゃなくて・・・」
「もう一つ食べる?」
「自分で食べます。」
「遠慮するな。」
 器用に私をソファに押しつけたまま、彼はテーブルに手を伸ばしてぶどうを1粒とった。
 それを自分の口に放り込み、今度は皮を取ってから私に口づける。
 今度は舌を絡めて邪魔してくるようなことはなかったが、唇は離してもらえず息が苦しい。
 ゆっくりとぶどうを咀嚼して、飲み込む。口に残った甘い果汁の余韻に浸っていると、また舌をねじ込まれた。
「たい・・・、やめて。」
「・・・甘いな。」
 睨む私のことなど素知らぬ顔で、彼はぺろりと私の唇をなめた。
 私はため息をついた。
「やっぱり酔った男の誘いになんてのるもんじゃありませんね。」
「なんのことだ。」
「やっぱりレベッカは正しい、って話です。」
「当たり前じゃないか。保護者の忠告を軽んじた君が悪い。」
 そう言うと彼は私の前髪をかきあげて唇をつけた。
 こめかみ、両頬、鼻先と降ってきたキスにうっとりと目を閉じると、また唇をふさがれる。
「・・・まったく。君、無防備だぞ。」
「なんですか?」
「おいしいチョコだのワインだのぶどうだのにつられてのこのこついてきて。相手が私だからいいが、よそで同じことしちゃダメだぞ。」
「するわけないでしょ。」
「どうかな。君、食いしん坊だしな。いいか。おいしい物ごちそうするから、なんて男の戯れ言は相手にするなよ。」
「しません、って。子どもじゃあるまいし。」
「サングリア飲む?」
「飲みますからどいてください。」
「飲ませてあげよう。」
「結構です。自分で飲みますからどいて・・・って」
 彼は私のいうことはまるっと無視して、口移しでワインを流し込んできた。
 飲み下しきれなかったワインが口の端からこぼれた。
「・・・もう!どいて!」
「あーあ、こぼれちゃったな。」
 彼はにやにやしながら、指で私の唇をぬぐった。
「ほら、服にもこぼれてるぞ。」
「え?」
「染みになる前に脱いだ方がいいな。」
「・・・は?」
「手伝ってあげよう。」




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