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「Et cetera」
-2017年11月~12月

ホームにて|中尉と大佐

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 セントラル行きの汽車に乗って発車を待っていると、反対側のホームに空色の汽車が入ってきた。
 あ、と小さく呟いた声が聞こえて、ロイは顔をあげた。
「ん?どうかしたのか?」
「いえ、別に。」
 彼女は首を振って何でもない体を装っていたが、ロイは彼女と空色の汽車を交互に見て、「ふうん」と頷いた。
「・・・なんですか?」
「懐かしいな。」
「何が?」
「昔、君んちに行くときはいつもあの汽車に乗った。」
 そう言ってロイはニヤリと笑った。
「行くときは、って。住んでたでしょ、うちに。」
「夏とか年の暮れとかはマダムのところに帰っていただろう。」
「そうでしたっけ。」
「セントラルからイーストシティまでは特急で帰ってこれるんだけど、ここからは各駅のあの汽車に乗らないと君の家に帰れないんだ。座席が固いから尻は痛いし、しょっちゅう停まるからちっとも進んでる気がしないし。イーストシティから君の家までがすごく遠く感じてもどかしかったよ。」
「そうですか。」
「でもあれだな。汽車のせいじゃなかったかもな。」
 そう言うとロイは尻を窓際に寄せて、あいたスペースを軽く叩いた。
「ほら、こっちに来たまえよ。」
「ボックス席でなんでそんなぎゅうぎゅうに座るんですか。狭いでしょ。」
「お年寄りが乗ってくるかもしれないじゃないか。」
「指定席ですよ。」
「いいから。ほら、上官命令。」
 ロイは彼女の腕をつかんで、ぐいっと引っ張った。
 渋々リザがロイの隣に座ると、ロイは彼女の方に頭をもたせかけた。
「ちょっと。大佐。」
「君に会いたかった。」
 ロイがそう呟くと、リザは眉をひそめた。
「毎日会ってますけど。」
「そうじゃなくて。あの汽車に乗って、もうすぐ君の所に戻れる、と思うといつも落ち着かなくなったんだ。私のいない間に君が泣いていないだろうかとか、おみやげを喜んでくれるだろうかとかね。それに私が帰ると、君はいつも『お帰りなさい、マスタングさん』って言ってくれるんだ。その『おかえりなさい』が嬉しくてね。そう言ってくれる人が身近にいなかったから。」
 ロイの告白をリザは黙って聞いていた。
「あの汽車に乗れば、必ず君に会えると思っていた。でもある日、君はいなくなっていた。それ以来、あの汽車には乗っていない。見ないようにもしていた。二度と戻らないあの時が、ほんとうにかけがえのないものだったのだと改めて突きつけられているような気がしてね。」
 そう言ってロイはリザの手を握った。
「本当に。いつだって気づくのは、なくしてからなんだ。」
 ロイが誰のことを言っているのかを察したのか、リザはロイの手に自分の手を重ねて、彼の髪に額をつけた。
「・・・抱きしめてはくれないのか?」
 おどけたようにロイは言った。
「それはセントラルに着いてからにします。」
「そうか。・・・リザ。」
「なんですか?」
「君は死ぬなよ。」
「当然です。私にはあなたを撃ち殺すという使命がありますから。」
「そうだったな。」
「あなたも死なないでくださいね。」
「善処する。」
「あなたを殺していいのは私だけですよ。」
「わかってるよ。」





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ヒューズさん殉職後、マスタング組がセントラルに異動になったあたり。




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