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「Et cetera」
-2018年1月~6月

HERO|中尉と大佐

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 私にとって
 彼1人、彼だけが私のヒーロー。

 1度だけ戦場で泣いたことがある。
 心も体も疲弊してすり減ってボロボロで。
 もうこれより下はないだろう、と思えるほどのどん底で、
 自分を殺して人を殺す職務に従事していたその時。
 彼を見つけてしまった。
 これより下はないと思っていたのに。
 さらにその下、奈落に突き落とされたようなその感覚に、感情が抑えきれなくなった。

「何を考えているんだ?」
 背中から私を抱きしめて、彼は私の耳元で囁いた。
「あなたと再会したときのことを。」
 正直に私は答えた。
「これ以上はない、ってくらい絶望しました。」
 そう言うと、彼はあー・・・、と気まずそうに言葉を濁した。
「・・・そうだろうな。」
「でもあれで私は救われたんです。」
 今思えば、ですけど。
 そう付け加えると、彼は怪訝な顔をした。
「泣けてよかったな、と教官に言われました。完全に心が壊れてしまう前に、ちゃんと感情が取り戻せてよかった、って。」
 彼の手をとって口づけた。
「だからあなたは私のヒーローなんです。」

 贖罪とか償いとかそんなのは本当はただの言い訳で。
 ただ私は自分を傷つけたかったのかもしれない。
 自傷行為のように「軍人になる」という選択をした私を、彼は自分の副官にした。
「私が道を踏み外したら私を撃て。」
 そんな命令とともに。
 単なる自傷行為しか知らない私に「目的」ができた。

 欲しいときに欲しいものを彼はいつも私にくれる。
 いつだって頼みもしないのに。
「君が好きだ。」
 そう告げられたときは、心臓が止まるかと思った。
 本当は私がそう言いたかったのだと、その時自覚した。

 あなたが好きです、と。

 甘えることも甘えられることも知らなかった私に、それを教えてくれたのも彼だった。
 付き合っていくうちに、自然とルールが私の中に染みこんでいく。

 疲れた時は彼を抱きしめていい。
 会いたくなったら会いに行けばいい。
 声が聞きたい時はいつでも、たとえそれが深夜であっても電話をしてかまわない。

「迷惑じゃないんですか?」
 そう訊くと、彼は笑った。
「私もそうしたいんだから、お互い様だ。」

 疲れている時、彼は私を抱きしめる。
 会いたいときに会いに来る。
 たとえ深夜であっても、電話をすることに遠慮をしない。

 そうされることが、とても嬉しくて愛しい。
 そしてまた、彼も同じように思っている、と。
 にわかには信じがたいが、どうやらそうであるらしい。

 私に優しさを教えてくれたのは彼だと思う。
 自分と他人を傷つけることしか知らず、そうしないためには距離をとるしかなかった私が、彼と触れあうたびに自分にも他人にも優しくなっていける。

「ヒーローですよ、あなたは。」
「英雄、とはよく言われるけどね。違う意味だよな、もちろん。」
「違いますよ。私だけのヒーローです。」
 私を救ってくれるのは、いつもあなた。
 あなただけが私のヒーロー。





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