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「Et cetera」
-2018年1月~6月

すれ違い

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 ホークアイ少尉が男と歩いていた。

 マスタングは不機嫌だった。
 ホークアイ少尉が男と連れだって、道向こうを楽しそうに歩いているところを見てしまったのだ。
 即座に詰め寄りたい衝動に駆られたが、あいにく自分も女連れだった。

「昨日の男は誰だ。」
 朝の業務確認にきた少尉を遮って、マスタングは唸るようにそう訊いた。
 ホークアイは無表情のまましばらくマスタングを見つめ、肩をすくめた。
「・・・知人です。」
「ずいぶん楽しそうに歩いてたじゃないか。デートか?」
「中佐には関係ありません。」
「関係ない、とはずいぶんな言いぐさじゃないか。職務に障りがないようにしたまえよ。不利益を被るのはこっちだ。」
 投げつけるようにそう言うと、ホークアイの顔色が変わった。
 しまった、と思ったが、既に出てしまった言葉を取り消すことはできない。後の祭りだ。
「不利益、とはどういう意味ですか?」
「色恋沙汰に浮かれてミスがでるんじゃないか。」
「あなたと一緒にしないでください。」
「私は色恋なんかに現を抜かしたりしない。」
「そうでした。色恋とは無関係に女性と遊ぶんでしたね。」
「遊んでない。交流を広げて深めているだけだ。」
「昨日の方とはどこまで深めたんですか?」
「必要ならどこまででも深めるが、今はその話はしていない。君の話だ。」
「私が何ですか?」
「昨日の男とはどこまで深めてるんだ?」
 ホークアイの頬からすっと血の気が引き、一瞬後には紅潮した。
「私がどこで誰と何をしようと私の勝手です。ご自分だって女に不足はしていないでしょう!確かに私はあなたの部下ですが、あなたの女じゃありません!プライベートにいちいち口を挟むのはやめてください!」
 壊れそうな勢いでドアを叩きつけて、彼女は出て行ってしまった。
 いろいろ言葉を間違えてしまったマスタングは、デスクに突っ伏して落ち込んだ。

「中佐ー。あんた、何やらかしたんっすか?」
 昼過ぎ、マスタングの書類を回収にきたのはハボックだった。
「私がなんだ?」
 苛々と書類を渡すと、ハボックは目を眇めた。
「少尉がめちゃめちゃ怖いっす。」
「・・・昨日デート中にデートしてるところを見かけたから、どこまでやったか訊いたら怒った。」
「・・・どっからつっこんでいいのかわかりませんが、最初から最後まで最低っすね。」
「うるさい!わかってる!」
 八つ当たり気味にハボックを怒鳴りつけると、意に介した様子もなくハボックは肩をすくめた。
「とりあえずなんとかしてくださいよ。少尉の殺気でおちおちタバコも吸えません。」
「喫煙室に行け。」
「喫煙室にも行けないんですよ、怖くて。」
「仕事がはかどっていいじゃないか。」
「はかどりませんよ!緊張してミスってさらに怒られるんっすよ!」
 つばを飛ばして詰め寄るハボックをなだめるように手で制しながら、マスタングはため息をついた。
「わかった。少尉、呼んでこい。」
「うっす。」
「いや、ちょっと待て。・・・少尉にコーヒーを頼んでこい。」
「コーヒーっすか?」
「そうだ。丁寧に言えよ。お願いします、持ってきてください、と伝えろ。」
「はあ。」
 気の抜けた顔で首を捻りながら、ハボックはマスタングに言われたとおりにホークアイに伝えた。

「失礼します。」
 程なくしてホークアイがコーヒーを持ってきた。
「ありがとう。」
 お礼を言いながら、マスタングは彼女の顔を窺った。
 怒っている様子はない。
 だがマスタングと目を合わせないあたり、不機嫌は継続中のようだ。
「今日の夕飯だが」
 業務連絡と変わらない口調でそう告げると、彼女はガラスのように冷たい目を向けた。
「オムライスがいい。」
「・・・承知しました。」
「断らないんだな。」
 ホッとしたようにマスタングがそう付け加えると、初めてホークアイは少し表情を緩めた。
「別に難しくもないですよ、オムライスくらい。」
「私の家に出入りして、君の彼氏は怒らないのか?」
 恐る恐るそう訊くと、彼女は呆れたように首を振った。
「昨日のことを言っているなら、違います。」
「まだ付き合ってない?」
「付き合うも何も既婚者ですよ、あの人は。」
「・・・え?」
 意外な回答に、マスタングは口をあんぐりと開けた。
「レベッカのお兄さんですよ。3人でご飯の約束をしてたんですが、レベッカが仕事でちょっと遅れたんです。」
「カタリナ少尉の?」
「そうです。学生時代にお世話になったんです。変ですか?」
「いや・・・、変じゃない。」
 最初の衝撃が通り過ぎると、どっと安堵感がマスタングを包んだ。
「それなら最初からそう言いたまえよ!」
「仕事中にプライベートの話を振らないでください!」
「なんだ。本当にただの知人なのか。」
「だから最初からそう言ってるじゃないですか。」
「男と女が2人で歩いてたらそう思うだろ、普通!」
「世間一般をあなたの尺度で測らないでください!大体あなただって女連れだったじゃないですか!」
「・・・私に気づいてたのか?」
 意外に思ってそう訊くと、ホークアイは目をそらした。
「たまたま視界の端に見えただけです。」
「・・・妬いた?」
「・・・別に。」
「もしかして今日不機嫌なのってそのせい?」
「違います。」





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