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「Et cetera」
-2018年1月~6月

ミス・Mr.

 ←私の側に →いい男
「リーザちゃん。」
 大佐の執務室から顔を覗かせて、ヒューズ中佐がリザを手招きした。
「少々お待ち下さい。」
 リザは手持ちの書類を整えると、席を立った。
 マスタング大佐は会議中だった。
 いつものようにアポを取らず大佐を突撃訪問したヒューズ中佐は、主のいない執務室でのんびりコーヒーを飲んでいた。
「お呼びですか、ヒューズ中佐。」
「うん、暇でさ。」
「申し訳ありません。もう間もなく大佐も戻ってくると思いますが。」
「いーのいーの。それよりさ、秘密のお話。」
 ヒューズ中佐は執務室のドアをしっかりと閉め、鍵をかけた。
「このまえ家の掃除してたら懐かしいものが出てきてさ。」
 そう言うとヒューズ中佐は、軍服のポケットから1枚の封筒を取りだした。
「これ、ロイの秘密。君にだけこっそり見せちゃう。」
「なんですか、これ。」
 訝しげな顔のまま封筒を開けようとしたリザの手を、ヒューズは抑えた。
「だめだめ、こんなとこで開けちゃ。こっそり1人の時に見てくれ。」
 とてもとても悪そうな顔で、ヒューズ中佐はウィンクをした。

 食事を終え、大佐はシャワーを浴びていた。
 リザは洗い物を片付けると、ヒューズ中佐に渡された封筒をバッグから取りだした。
 中には写真が1枚入っていた。
 別に何の変哲もない普通の写真だった。
 リザは眉を寄せて、その写真をじっくりと眺めた。
「なんだ、何を見てるんだ?」
 ガシガシとタオルで髪を拭いながら、シャワーを終えた大佐がパンツ1枚の格好でリビングに入ってきた。
「あなたの秘密を。」
 簡潔にリザは答えた。
「私の秘密?」
 面食らったような顔でロイは繰り返した。
「でもなんでこれがあなたの秘密なんですか?」
 リザは首を傾げた。
「ていうか、誰これ?」
「見せてみろ。」
 そう言って大佐はリザから写真を取り上げ、そのまま固まった。
「な・・・これ、なんで・・・」
 血の気が引いて真っ青になったあと、彼は真っ赤になった。
「なんで!これ!君、どうして!」
「それですか?今日ヒューズ中佐にもらいました。」
「ヒューズか!やっぱりあいつか!燃やしてやる!」
「大佐?」
「見るな!見たか?見たのか?なんで見たんだ!」
「は?」
「今すぐ忘れろ!上官命令!」
「はあ。」
 大佐は引出しから発火布を出してはめると、リザが止める間もなく写真を灰にしてしまった。
「何するんですか!」
「忘れろ!」
 ロイは大声を出すと、両手で顔を覆って寝室に飛び込んでしまった。
 かすかに漏れ聞こえる声に耳をすませてみると、どうやら寝室からヒューズ中佐に電話をかけているらしい。
「笑うな、ヒューズ!笑うな!」
 彼の絶叫はどこか悲壮で、リザはこれ以上彼にこの話題を振るのはやめようと決めた。

「なんだったのかしらね、あれ。」
 リザがレベッカに話題を振ると、レベッカは興味津々に食いついた。
「どんな写真だったの?」
「うーん、たぶんミスコンだと思うんだけど。派手目のドレス着て、ばっちりメイクしたおねーさんが3人写ってて、ばっちりポーズ決めてた。」
「場所は?」
「なんかバックは殺風景で・・・って、あれ?」
 リザは写真の背景を思い起こし、首を傾げた。
「なんか・・・士官学校の寮の・・・談話室?に、似てたような。」
「談話室?あ!それ!もしかして!」
 レベッカは立ち上がると、リザの手を引いた。
「ちょっと!どこ行くの!」
「グラマン中将の執務室よ!」
「中将の?なんで!」
「大丈夫!今日は中将、セントラルだから!」
 レベッカはノックもせず中将の執務室に入ると、躊躇なく中将のデスクをあけた。
「ちょっと!レベッカ!」
「たしかこのへん・・・あった!」
 レベッカは一冊のノートを引っ張り出した。
「なにそれ?」
「ちょっと待って。・・・ね、リザ。あんたの見た写真、こんな感じじゃなかった?」
 促されて、リザはノートを覗き込んだ。
 それはアルバムだった。
 リザの見たような写真が何枚も貼ってあり、その下に年号が振られている。
 1899年、1900年、1901年・・・
「あ!これ!」
「どれ?」
「この写真よ。」
 リザの指さした写真を見て、レベッカはにんまりと笑った。
「やっぱりね。」
「これ何?何の写真?」
「士官学校の学祭の写真よ。」
「ミスコンなんてあったっけ。」
「これはね、男子寮にだけ伝わる秘密のコンテストなのよ。その名もミス・Mr.コンテスト。」
「ミス・Mr.?」
「よく見て、リザ。たぶんこの真ん中の子じゃない?ほら、ほら。」
 そう言われてリザはあらためてまじまじと写真を見つめ、・・・仰天した。
「大佐!」
「やっぱり!」
 そう言ってレベッカは爆笑した。

 おそらくはウィッグだろう長い髪をアップにまとめ、ミニスカ、ラメ入りのストッキング、さらにハイヒールで惜しげもなく足を強調し、ぴったり体に密着した肩出しの黒ワンピースを身に纏い、ゴールドのネックレスやピアスなどもつけ、さらにばっちりフルメイクでポーズを決めたその写真の中心人物は・・・
 紛れもなく己の上司兼恋人のロイ・マスタングその人だった。

「なんで中将、こんな写真集めてるの?」
「ああ、それね。初代ミス・Mr.がグラマン中将なんだって。」
「・・・冗談よね?」
「写真あるんじゃない?見る?」
「遠慮しとく。」






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