FC2ブログ

「Et cetera」
-2018年1月~6月

エドの趣味

 ←いい男 →恋する唇 | 前編
「大体さ、節操ねーよな、おまえは。」
 ブレダの揶揄をハボックは鼻で笑った。
「何とでも言ってくれ。」
 どうやら彼女ができたらしくご満悦なハボックは、足取りも軽くステップすら踏んでいた。
「何?ハボック少尉ご機嫌じゃん。」
 東方司令部に顔を出したエドワードとアルフォンスは、軍らしからぬふわふわした空気に戸惑った。
「ハボック少尉に恋人ができたんだよ。」
 フュリー曹長は苦笑いしながら2人にこの空気を説明した。
「ただそれが1月前に振られた女の子の友だちらしいんですけどね。」
 ファルマンが注釈を加え、エドワードは顔をしかめた。
「え、ハボック少尉、それっていいの?」
「何がだ?」
「元カノの影がチラチラしてめんどくさくね?」
「兄さんってそういうの神経質だよね。元カノはもう縁がないから『元』なんだよ。ハボック少尉、僕は応援するよ。」
「サンキュー、アルフォンス!」
 ハボックが豪快に親指を立てたので、アルフォンスも親指を立てて返した。
「そんなもんかなー。あ、じゃあハボック少尉にこれあげるよ。俺の手作り。」
 エドワードはポケットからごついネックレスを取り出すと、はい、っとハボックに渡した。
 受け取ったハボックだけでなく、その場にいたマスタング組はそれを見て全員黙り込んだ。
「・・・あー、エド。なんだ、これ?」
「ネックレス。」
「俺はこれをもらってどうすりゃいいんだ?」
「え?彼女にあげたら?かっこいいだろ?」
「・・・彼女に?いや、それはねーわ。」
 ハボックはエドワードに渡されたネックレスをつるすようにして持ち、苦笑した。
 それは控えめに言って豪快なネックレスだった。
 チェーンの部分はごつい鎖になっていて、そのトップに500センズ大のリアルで真っ黒な(さらにトゲトゲの)ドクロがついている。
 見た目ほど重くないのは材質がアルミか何かなのか。
「なあエド。これ、手作りっつったけど誰かにあげる予定じゃなかったのか?」
 ブレダが口を挟むと、エドワードはしかめっ面になって目をそらした。
「うるせーな。ほっとけよ。」
「兄さん、これウィンリィにあげようとしたんですよ。そしたら『趣味悪い』って怒られて。」
 アルフォンスが笑いながら言うと、さもありなんとばかりにエドワード以外の全員が頷いた。
「なんでだよ!」
 憤るエドワードの肩をハボックは優しく叩いた。
「エド。これから女の子にプレゼントするときは大佐に相談しろよ。」
「はあ?誰があんなムカつくくそ大佐なんかに相談するか!」
「だれがなんだって?」
 視察に行っていた大佐が、中尉を伴って大部屋に入ってきた。
 ちらりとハボックの持っていたネックレスに目を落とし、顔をしかめる。
「ハボック。なんだその趣味の悪いネックレスは。」
「俺のじゃねーっすよ。」
 慌ててハボックは手を振った。
 大佐は他の面々を順番に眺め、その視線からエドワードの方を振り返った。
「鋼の。おまえ、こんな趣味の悪いネックレス、どこで買ったんだ?」
「俺が作ったんだよ。いちいち趣味悪い、ってつけるんじゃねーよ。」
「わざわざこれを手作りして、どうしようと思ったんだ?」
「うるせーな。幼なじみにやろうと思ったら全力で拒否されたからハボック少尉にあげたんだよ。」
 つばを飛ばしてかみつかんばかりに、エドワードは大佐に詰め寄った。
「そりゃそうだろうな。ていうか、なんでおまえ女の子にこんなのプレゼントしようと思ったんだ?無難に花かお菓子でも買っていけばいいものを。そういうとこがガキだな。ちびっこいな。幼いな、鋼の。」
「うるせー!チビって言うな!」
 つかみかかろうとしたエドワードを中尉は手で制し、大佐の足をガンッと踏んだ。
「うっ!」
「いい加減にしてください、大佐。子どもをからかって楽しむなんて趣味が悪いですよ。」
 中尉は大佐を睨むと、ハボック少尉からネックレスを取り上げた。
「ね、エドワード君。なんでネックレスをプレゼントしようと思ったの?」
「え?」
 エドワードはきょとんとしてネックレスと中尉を交互に見た。
「だって女の子、ってアクセサリーとか喜ぶんじゃないの?」
「プレゼントする相手が女の子だからアクセサリーなのね。じゃあなんでドクロと鎖?」
「かっこいいじゃん。」
「それは君の主観ね。ねえ、女の子が喜ぶようなアクセサリーをプレゼントしたいなら、女の子向けのお店で探した方がいいと思うし、君の好きなものをプレゼントしたいならアクセサリーじゃなくてもっと実用的なものをプレゼントした方がいいと思うわ。」
「実用的か-。」
 エドワードは腕を組んで考え込み、そろりと見上げるように中尉の顔を窺った。
「工具とかどうかな?」
「工具?」
「俺の幼なじみってさ、オートメイル技師なんだよね。だからスパナとかドライバーとかレンチとか。そういうやつにならドクロつけてもいい?」
「それなら浮かないと思うわ。でもあまり目立たないようにするのよ。」
「わかった!ありがとう、中尉!おい!くそ大佐!これ言われてた報告書!アル!行くぞ!」
「え?もう行くの?ちょっと待ってよ、兄さん!あ、おじゃましました。」
 賑やかな兄弟が走り去っていくのを、司令部の面々は呆然と見送った。
 中尉の手には、エドワード作のドクロ付き鎖ネックレスがまだ残っていた。

「君もアクセサリーとかもらったら嬉しいのか?」
 大佐の問いに、中尉は首を傾げた。
「いただく相手によります。」
「私だったら?」
「あなたからいただくものならドクロのネックレスでも大事にしますよ。」
「いや、さすがにあれは私もないな。ところであのネックレス、どうしたんだ?」
「ああ、あれ。グラマン中将に差し上げました。」
「え?」
「たいへん喜んでいただきましたよ。」
「・・・そう。」

 それからしばらくの間。
「これ、ホークアイ中尉にもらったんだよ。」
 会う人会う人全員にグラマン中将はそう自慢して歩いた。
 そのため中尉の趣味を誤解したホークアイファンは、こぞって中尉にドクログッズをプレゼントした。
 中尉のデスクはしばし、おどろおどろしいことになってしまった。






にほんブログ村 小説ブログへ 
ランキング参加しています。クリックいただけると励みになります。




Facebook始めました。更新情報をお知らせします。


ツイッター始めました。更新情報をお知らせします。( @Kar1n_6110 )




関連記事
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png 少尉と中佐
総もくじ 3kaku_s_L.png 中尉と大佐
総もくじ 3kaku_s_L.png マスタングさんち
総もくじ 3kaku_s_L.png 彼と彼女の
総もくじ 3kaku_s_L.png Et cetera
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png プロローグ
総もくじ  3kaku_s_L.png 少尉と中佐
もくじ  3kaku_s_L.png ロイとリザ
総もくじ  3kaku_s_L.png 中尉と大佐
総もくじ  3kaku_s_L.png マスタングさんち
もくじ  3kaku_s_L.png 彼の親友
総もくじ  3kaku_s_L.png 彼と彼女の
総もくじ  3kaku_s_L.png Et cetera
もくじ  3kaku_s_L.png 新刊サンプル
  • 【いい男】へ
  • 【恋する唇 | 前編】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。