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「Et cetera」
-2018年6月~12月

猫のようにしなやかに|5

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 夕飯を終え、マスタングはソファを1人で占領して、買ったばかりの錬金術書を読みふけっていた。
 食器を洗い終えたリザは適当な料理本を開き、ソファに背をもたせかけた。
 2人はそのまま言葉も交わさず、互いに自分のことに集中していた。
「・・・大佐。」
 先に声をかけたのはリザの方だった。
「なんだ?」
「喉が渇きました。」
「奇遇だな。私もそう思っていた。」
「お茶が飲みたいです。」
「冷蔵庫に入っている。」
 本から顔もあげようとしないマスタングを、リザは睨んだ。
 手にしていた本をテーブルに置き、正座を崩したように斜めに座り、両手を彼の太ももに置く。
 チラリと彼がこちらを向いた。
「大佐。」
 意識して媚びるような視線で、彼を見つめる。
 その際に両腕を内側に締めて、少し胸を強調してみた。
 リザの方が下に座っているので、自然と上目づかいになるのも計算尽くだ。
「お願いします。冷たいお茶、淹れてください。」
 うっ、と小さくマスタングは呻いた。
 渋々といった体で立ち上がり、マスタングはグラスを2つ用意してお茶を注いだ。
「どうぞ、お嬢様。」
「ありがとうございます。」
 とっておきの笑顔でリザがそう言うと、マスタングは自分のほっぺを指でちょんちょんとつついた。
 その意図を正確に理解し、リザはマスタングの頬に唇で触れた。
「こっちは?」
 マスタングはニヤリとして、今度は自分の唇を指さした。
 リザはわざと焦らすように直前で止め、それからかすめるようなキスをした。
 不満そうなマスタングが迫ってくるのを、指でそっと抑える。
「先にお茶を頂きます。」
 お預けをくらったマスタングは、目を眇めてため息をついた。
「まったく。うまくなったものだな。」
「なんのことですか?」
「色仕掛けで男を翻弄すること。」
 マスタングは肩をすくめた。
「よそではするなよ。」
「ここまであからさまなことはしませんよ。」
「少しはするってこと?」
「そのために練習したんですから。」
 何言ってるんですか、と呆れたようにリザが言うと、マスタングは眉間にしわを寄せてリザを睨んだ。
「やりすぎるなよ。そうでなくても君に惚れる男は多いのに。」
「そうなんですか?」
「知らぬは本人ばかりなり、だな。まあ普段の君は徹底して軍人だから心配してないけど。」
「当然です。こういうのはギャップがある方が効果的なんですよ。」
「悪い女に育っちゃったな。」
 マスタングは大げさに天井を仰いで、嘆いてみせた。
「つきあう男のせいじゃないですか?」
 澄ました顔でお茶を飲みながらそう宣ったリザに、マスタングはじりとにじり寄った。
「悪い男と付き合ってるんだな。」
「とっても悪そうな顔ですね。悪いこと考えてます?」
「先に煽ったのは君だぞ。」
「まあ自覚はあります。いいですよ。明日は非番だし。」
「いい度胸じゃないか。途中で止められないからな。」
 そう言ってマスタングは、ぐいっとリザの腕を引いた。
 倒れ込んできたリザの体を受け止めて、そのままキスになだれ込もうとすると、またもやリザに阻まれた。
「・・・リザ。」
 詰るような目をする男に妖艶な笑みを投げかけ、リザはマスタングの首に腕を絡めて抱き寄せた。
「ロイさん。」
 息を吹きかけるように耳元でそう囁くと、マスタングの肩がぴくりと震えた。
「今日は好きなだけあなたにおつきあいしますから・・・」
 唇で耳をなぞるように触れると、マスタングは何かに耐えるようにゆっくり息を吐いた。
「・・・明日の朝はラ・ヌールのフレンチトーストが食べたいです。」
 ぐいっと両肩を押されて、リザはマスタングから引き離された。
「どこの何が食べたいって?」
「ラ・ヌールのフレンチトースト。」
「時計台の近くにできた新しいカフェだな、確か。」
「テイクアウトできるんですよ。」
「つまり買ってこい、ってことか。一緒に食べに行く、ってのは?」
「そうしたいのはやまやまなんですが、疲れて起きれないかも。」
 わざと小首を傾げて、いたずらっぽく笑ってみせる。
 マスタングはがしがしと髪を乱して、ため息をついた。
「ずいぶんおねだり上手じゃないか。好きなだけ付き合ってくれるんだな。手加減しないぞ。」
「そのつもりですよ。どうぞお好きに。」
「まったく。こんな男を惑わすようなやり方、どこで覚えたんだ?」
「あなたを相手に研究を重ねた結果です。」
「私にお茶を淹れさせるような女なんて君だけだぞ。朝ご飯を買ってこさせる女もな。」
「ご不満ですか?」
「いいや、まったく。」
 今度こそ思う存分、深く、唇を重ねた。




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pixivに続きを載せました。R18なのでご注意。
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