FC2ブログ

「Et cetera」
-2018年6月~12月

彼女の長い1日|3

 ←彼女の長い1日|2 →彼女の長い1日|4
 昼休憩に半分かかるほどの会議を終え、リザは疲労しきっていた。
 日頃マスタングを好ましく思っていないらしい年配の中佐に、ここぞとばかりに嫌みや皮肉を言われたのもこたえた。
 とにかく昼食を終えて、議事録も早めにまとめてしまおうと急いでいると、グラマン中将に呼び止められた。
「今日はマスタング君、どうしたの?」
「申し訳ありません、閣下。本日大佐は体調を崩して休んでいます。」
「ふーん。疲れてたのかな。意外に真面目だしね-。」
 わしなんか適当にサボってるから風邪なんか引かないよ。
 トップにあるまじきジョークを言いながら笑う司令官を見ていると、彼の副官に心から同情してしまう。
「ところでリザちゃん。今、暇?」
「暇じゃありません。」
「チェスしようよ。マスタング君がいないから相手が見つからなくてさ。」
「暇ではありませんし、大佐の代わりが務まるほどチェスが得意でもありません。」
「でもマスタング君がさ、君は荒削りだけどいい打ち方をするって褒めてたよ。」
「恐縮です。」
「ちゃんとご褒美もあげるよ。もし君が勝ったら夏期休暇3日間プレゼントしちゃう。」
 その言葉に、リザはぴたりと足を止めた。
「マスタング君と一緒にとってもいいよ、夏期休暇。」
 さらに追い打ちをかけるように、グラマン中将はそう言ってニヤリとした。
「私と閣下ではそもそも勝負にならないでしょう。」
「ちゃんとハンデつけるよ。そうだな・・・クィーンおとしていいから。」
「クィーン落ち。」
「なんならルークもはずそうか?」
 あまりチェスに長けていないリザでも分かるほど露骨なハンデだ。
「その言葉、後悔なさいますよ。」
「君と遊べるのに後悔なんかしないよ。」
 勝負など問題ではない、と言わんばかり(というより負けるとは微塵とも思っていない)のその口ぶりに、リザの闘争心が燃え上がった。

「リーザちゃん?」
「なんですか?」
「まだ?」
「今考えているところです。」
リザは悩みながら、ナイトを動かした。
「面白いね。でもこっちが手薄だよ。」
「問題ありません。」
「そう?」
「チェックです。」
「ほうほう。じゃあはい、ここにビショップ。」
「・・・どうぞ。」
「いいの?じゃあ・・・はい、チェック。」
「・・・参りました。」
 リザはため息をついた。
「直線的な動きは狙撃手らしいけど、ちょっと視野が狭いかな。」
「精進いたします。」
「じゃあ今日、接待の同伴お願いね。」
 にこやかに告げられた仕事の依頼に、リザは硬直した。
「・・・は?」
「今日レベッカちゃん、研修でいなくてね。」
「接待?」
「セントラルからウィルソン中将がくるの。4時にイーストシティに着くらしいからお迎えも行ったげて。」
「接待?」
「本当なら明日の予定だったんだけどね。なんか夕方にはセントラルに戻りたいから前入りするんだってさ。迷惑な話だよね。」
「初めからそのつもりだったんですね。」
 リザが睨んでも、この将軍は気に留める様子もなかった。
「確かにちゃんと説明しなかったのはフェアじゃなかったかな。今のは練習ということにして、もう一回する?」

 本気の中将に敵うはずもなく、リザはチェス2戦分の時間を無駄にして接待まで押しつけられた。





にほんブログ村 小説ブログへ 
ランキング参加しています。クリックいただけると励みになります。




Facebook始めました。更新情報をお知らせします。


ツイッター始めました。更新情報をお知らせします。( @Kar1n_6110 )




関連記事
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png 少尉と中佐
総もくじ 3kaku_s_L.png 中尉と大佐
総もくじ 3kaku_s_L.png マスタングさんち
総もくじ 3kaku_s_L.png 彼と彼女の
総もくじ 3kaku_s_L.png Et cetera
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png プロローグ
総もくじ  3kaku_s_L.png 少尉と中佐
もくじ  3kaku_s_L.png ロイとリザ
総もくじ  3kaku_s_L.png 中尉と大佐
総もくじ  3kaku_s_L.png マスタングさんち
もくじ  3kaku_s_L.png 彼の親友
総もくじ  3kaku_s_L.png 彼と彼女の
総もくじ  3kaku_s_L.png Et cetera
  • 【彼女の長い1日|2】へ
  • 【彼女の長い1日|4】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。