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「Et cetera」
-2018年6月~12月

彼女の長い1日|4

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 昼食を食べ損ねた。
 空腹と疲労も相まって、リザは苛々と歩いていた。
 すれ違う同僚が思わず道を譲ってしまうくらいには、険しい顔をしていたらしい。
 大部屋に入ると、ハボック少尉と目が合った。
 彼はリザに声をかけようとして、口を開けたまま声を飲み込んだ。
「あ、中尉。お疲れ様・・・です。」
 明るくそう声をかけたフュリーも、顔をあげてリザの方を向くと、頬を引きつらせて黙り込んだ。
「あ、ああ・・・、中尉。お疲れ様です。」
 ようやく声を取り戻したハボックの労いにもこたえず、リザはドサリと自分のデスクに座った。
「えーと、朝頼まれてた書類の確認お願いしたいんですけど。」
「すぐやるからカツサンド買ってきてくれる?」
 書類を受け取りながらややぶっきらぼうにそう言うと、ハボックは目をしぱたいた。
「カツサンド?」
「お昼食べてないの。」
 ハボックは驚いて、壁の時計に目をやった。
「もう2時過ぎっすよ。」
「グラマン中将に捕まってたのよ。」
 魂ごと吐き出しそうな深い深いため息をついて、リザはデスクに突っ伏した。
「おまけに接待まで押しつけられたのよ!暇じゃないのに!」
「あ、ああ・・・えっと。ご愁傷様です。」
「あ、そうだ。カツサンドですね!」
 リザのどす黒い負のオーラに耐えきれなくなったのか、フュリーは慌てて立ち上がった。
「僕、買ってきます。すぐ行ってきます。」
 脱兎のごとく飛び出していったフュリーの背中を見送りながら、ハボックは火の付いていないタバコをくわえた。
「そういや大佐から電話がありましたよ。」
 ぴくりとリザの背中が動いた。
「中尉に会いたいからアイス買ってきて欲しいとかなんとか。」
「私が食べたいわよ、アイス。」
 気を取り直したように起き上がると、リザはデスクに置いてあった鉛筆をくるくると回した。
「大佐、どんな様子だった?」
「中尉に会いたい。中尉と話したい。中尉の声が聞きたい。」
「私も会いたいわ。今すぐ司令部に来てこの書類全部片付けてくれたら、もう無能なんて呼ばないのに。」
「中尉、愛と呪いが混ざってますよ。」
 いつになくやさぐれた様子のリザに戦きながら、ハボックは呟いた。
「とにかく4時までに書類全部やっちゃうわ。カツサンドくるまで声かけないで。」
「うぃっす。なんで4時?」
「ウィルソン中将がくるのよ。駅まで迎えに行かなきゃ。」
「・・・それは俺が行きますよ。他に欲しいもんないですか?コーヒーは?」
「牛乳とお砂糖たっぷりのカフェオレにしてきて。」

 カツサンドとカフェオレで小休憩をとると、リザの機嫌も少しよくなった。
 そういえば大佐から電話があったんだっけ。
 ちょっと様子をきくくらいかまわないだろうと、リザは受話器をとった。
 少し声が聞ければ自分の気持ちも落ち着くだろう、という下心もあった。
 しかし彼は電話に出なかった。
 病院にでも行っているのか、電話に気づかないくらい熟睡しているのかそれとも体調が悪いのか。
 コール音を15回数えて、リザは電話を切った。
 安らぐはずだった心は、もやもやと重くなっただけだった。






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