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「Et cetera」
-2018年6月~12月

彼と彼女の足音

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 男同士で集まると、卑猥な話に花が咲く。
 最初は好みの女性のタイプなどかわいい話だった。それが次第に、いつどこで何人とといった過去の武勇伝、誰とヤッた、またはヤリたい、好みの体位から自身の性癖といった赤裸々な暴露にまで及んでいく。
 某大佐も非常に楽しそうに、部下とその話題に興じていた。むしろ積極的だったといってもいい。
 最近ではあんなコトやこんなコトをという自慢にも聞こえるその話を、男たちは興味津々で聞き入っていた。
 その彼が不意に真顔になった。腰掛けていたハボックのデスクから尻をあげて、不安そうに廊下側をチラリと見る。
「どうかしましたか、大佐?」
 ブレダが訊くと、彼は肩をすくめた。
「中尉の足音がする。」
 そのセリフに、男たちは目を瞠った。
 おもわず耳を澄ましてみるが、別に何も聞こえない。
「気のせいじゃないっすか?疚しい話なんかしてるから。」
「違う。間違いない。しかも怒られる予感がする。」
 ハボックの指摘を一蹴して、大佐はそわそわと自身の執務室へと向かった。
「いいか。私は執務室だ。中尉が来たらそう伝えろ。」
 わざわざそんな伝言を残して、大佐は執務室へこもった。
 当惑しながら残された男たちで顔を見合わせていると、バタンと乱暴に大部屋のドアが開いた。
「大佐!いらっしゃいますか!」
 鋭い視線がぐるりと部屋を一周する。
 冷たい殺気、一切表情のないその顔、気配すら感じさせないその足運び。
 間違いなく彼女は怒っている。
「大佐なら・・・」
 執務室に、とフュリーが言うより早く、中尉は今入ってきたドアの方をバッと振り返った。
「廊下ね。」
 一言呟き、素早く廊下に引き返した彼女を、男たちはやはり呆然と見送った。
「いや、執務室。」
 そうもらしたハボックの言葉にかぶせるように、中尉の「大佐!」と叫ぶ声が聞こえた。
 へ?と残された男たちは顔を見合わせる。
 慌ててブレダが執務室のドアをあけると、そこはもぬけの殻だった。
「おい!大佐、部屋にいねーぞ!」
「マジで?なんで?」
 どたどたと全員で廊下に出ると、猛然と大佐を追いかける中尉の背中が廊下の角を曲がって見えなくなった。
「そういえば聞いたことがあります。」
 ファルマンの声に、男たちはそちらを向いた。
「大佐の執務室にはこっそり錬成された隠し扉があるとか。」
「ありそうだな。ていうか、あるんだろうな。」
 ブレダが頷くと、ハボックはため息をついて髪をかきあげた。
「でもさ、中尉、執務室には目もくれず廊下に出てったぜ。」
「なんでしょうね。気配?」
「独身寮の安普請じゃあるまいし。ドア閉めて廊下の足音が聞こえるか?」
「いや、それよりもよ。」
 ブレダが首を振りながら口を挟んだ。
「その前の大佐の方が怖えよ。中尉の足音なんか聞こえたか?」
「足音もですが『中尉』って断言しましたね。」
「ていうかさ、中尉って足音しなくね?音も気配も全然わかんねーんだけど。特に怒ってるとき。」
「狙撃手ですからね。」





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